ベルリンで現地小学校(6年生)からギムナジウム(7年生)に進学するの巻

なんだかすっかり情報発信をしていく気力を失ってから、4年近くこの「ベルリン育児戦争」を更新していませんでした。てへ。

Schultüteを抱える新一年生くん。背後に仮設トイレ。

ドイツ小学校入学式の必須アイテム”Schultüte”を抱える新一年生くん。背後に仮設トイレ。

思い起こせば3年前、息子もお姉ちゃんと同じ現地小学校に入学をはたし、いまや3年生。明日は音楽の発表があるとかないとかで、随分前から「僕れんしゅうしなくっちゃ!」と騒いでいた割にはちっとも努力している様子もなく、直前の心境を聞いてみると「こわい!どきどきしちゃう!」とか言ってるし・・・息子よ、努力だけがその恐怖を拭い去れるのだよ・・・とかアスランっぽく心の中で呟くわたくし。最近やっと「ナルニア国物語」を全巻家族で読み終えました。

さてベルリンの小学校は6年生まであり※、成績のよい子はやはり5年生からギムナジウムに進むのですが、6年生までしっかり小学生をやる子もたくさんいます。何しろ将来的には全ての小学校を「全日学校(Ganztagsschule)」にベルリンはしたいらしく、どの学校も「給食」がしっかり出て、学童保育も申し込めば16時まで受けられ、親の就労状況によっては18時までの延長保育も申し込めるなど、なかなか手厚いのです(給食費と保育料が若干かかりますが)。 ※ドイツは州ごとに学校法が異なるので、今でも小学校は4年生までの州があります。たぶん。

「全日学校(Ganztagsschule)」というのは、簡単に言うと毎日16:00まで時間割があって、その中に勉強の時間や遊びの時間、学童保育の時間などがまとめられていて、全部小学校が面倒を見てくれるって感じのものです。簡単に言うと、ですよ。

で、我が家の娘さんはドイツ語より日本語ベースで育っているので当然5年生からギムナジウムに行ける筈もなく、担任の先生も6年生まで小学生をやるべきだと仰り、まあのんびり6年まで小学校に居ておくれ~って感じでやってきたわけです。

日本の漫画・アニメ・小説が大好きなムスメの放っておいても伸びる日本語力とは引き換えに、ドイツ語力の遅れは明白でしたが、『日本語でドイツ語を引っ張っていく』という方針を固めていたので、内心は焦りつつもなんとかなるべ・・・と安穏なダメ親の心を知ってかしらずか。ムスメはドイツ語以外の教科で頑張りました。親孝行だなぁ。

と、いうことで今回のテーマはギムナジウムの進学。


最初の勝負は5年生の冬以降にやってくる

小学校を6年生まで通った後は、通常ギムナジウム(Gymnasium)かゼクンダーシューレ(Sekundarschule)に進学します。最近は「種類」としてそう呼ぶのに対し、正式にはどちらの学校も「上級学校(Oberschule)」という呼称になってきているようですね。

小学校の成績表と関係書類を入学を志望する学校へ提出し、定員数が割れていればそのまま入学、もし定員オーバーだった場合は各学校の定めた条件にしたがって選抜されます。

で、その「成績表」というのが単純に6年生最後の成績表を提出するというものではなく、5年生の夏の成績表と6年生の冬の成績表 から、以下のような計算方法で『平均値(Durchschunittsnote)』が出され、それが評価されるんですね。

1.主要科目(ドイツ語・算数・理科・外国語)の評価点は合計して2倍にする

2.その他の科目はそのままの評価点で合計する

3.全ての評価点を合計し、26で割る

【式にすると】

(2期分の主要教科成績×2+2期分残りの教科成績合計)÷26=平均値

そしてその平均値が2.2ぐらいまでなら、ギムナジウムに行ことを検討しましょうってことだそうです。

もちろん平均値が3だったとしても、ギムナジウムを志望校にすることはできますが、運よく入れたとしても気を抜けないのがドイツ。入学後半年間は「お試し期間(Probezeit)としてがっつり観察され、授業についていくことが出来ないと学校側に判断されると転校させられてしまいます。いやはや。ちなみに5年生からギムナジウムにいく場合、Probezeitは1年間だそうです。

そんな訳で娘とは5年生になった時点からギムナジウムに行きたいか、行きたいならしっかり結果をだしていかないといけないよと話しておき、本人もギムナジウムに行けたら行きたい!ということで5年生あたりから『成績』を意識して勉強に力を入れだしたのでした。

学校ごとに独自の入学基準(Aufnahmekriterien)が!

さてその平均値。多くの学校が入学判断基準にしているので合否の決め手になるのは間違いないのですが・・・

娘の希望した学校には定員オーバーになった際の「合格基準」はなんと以下のようなものでした。

1.50%は5年後期・6年前期の成績の合計点から、以下のやり方でポイント計算する

・算数は2倍で計算し、ドイツ語・英語・理科の点数と足し算する。最高点は10 点(オール 1)
・最高点10点(オール 1の場合)の場合は20ポイントがつき、以降1点ずつ 小さくしたポイントがつく。
(つまり、成績の合計点が30点以上の場合はポイントなし。)

2.残りの50%はテストの点数がそのままポイントになる。最高点は20ポイント。
テストの内容は以下の通り。

・一般知識
・算数と理科の基礎知識と理論的な思考力

上記2つのポイント(最高40ポイント)結果から合否が判定される。
同ポイントの場合は抽選になる。

上記のようになかなかややこしい基準で、小学校の成績で「音楽」とか「美術」とか得意でもあんまり評価に繋がらないんですね。

あ!ちなみにドイツは最高評点が1で、落第点が6の6段階評価です。日本とは逆ですね~。

しかしこれは娘の第1志望校独自の入学基準で、学校が変われば「音楽」が2倍計算になったりもします。公立といえども学校ごとに色んな特色があって、しかも数年前から『学区』というしばりがなくなったので、それこそベルリン市内どこの学校でも志望することができちゃうんですね。

日本だとまるで高校受験のような雰囲気です。でも大きく違うのは「試験が必ずあるわけではない」とうこと。娘の志望校は特に数学に力を入れている理数系のギムナジウムで、定員オーバーの志望者が集まった場合のみに、上記のようなテストを行うわけです。親との面接があるところや、成績の平均値だけで決めるところもあるのです。学校それぞれの裁量に任されているところがとても大きいのです。


情報集めはネットでね?

ところで学校それぞれの特色や入学基準はどうやったら調べたらいいんだろうか・・・?

知人・友人に手当たり次第聞いて廻るのもありでしょうが、個人的な経験だけに頼ることになるのでやっぱり幅の狭い情報しか入ってきません。それで、娘の個人面談の際に担任にお伺いしたところ「インターネットで調べてみて?」って言われちゃいました。学区内の学校ですら「ああ、話には聞いたことがあるわ~」程度で、情報源としては先生は役に立っていただけない様子。

そこでネットで調べまくりましたら、大抵の学校は自サイトを開設していてそこで入学基準についても公開していたり、入学願書と一緒にPDF化して公開されていることがわかりました。

ちなみにベルリンのGymanasiumとsekundarschuleを調べるなら、以下のサイトがお薦めです。

gymnasium-berlin-net

ベルリンじゅうのGymnasiumを調べることができる「Gymnasium Berlin」

こちらはベルリンじゅうのSekundarschuleを調べることができる「Sekundarschulen in Berlin」

こちらはSekundarschuleを調べることができる「Sekundarschulen in Berlin」


最終判断は実際に行って見てから

大体12月~1月にかけて、小学校担任と面談があり、その時点での成績からギムナジウムに進学するかどうかの大きな判断だけつけて、最終的には2月初旬の冬休み前に出る「6年生の冬の成績」で「平均値」が出ると共に、進学に必要な書類を一式小学校から貰います。その間の約1ヶ月間に、GymnasiumやSekunderschuleでは「学校開放日(Tag der Offenen Tür)」が集中的に開催されます。

これはドイツでは恒例行事で、小学校でも10月ごろの申込み期間前によく開催されます。Oberschuleの場合は大抵土曜日に開催され、その日は学校を開放して先生と生徒たちで、訪問者に普段どんな事を学校でやっているかわかるような催しや展示をいろいろと見せてくれるんですね。食べ物も売ってくれます。ちょっとした文化祭のような雰囲気…いや、そこまで力入ってないしお祭り騒ぎではないですけれど。

母が個人的に気に入ってしまった綺麗な講堂(Aula)。

母が個人的に気に入ってしまった綺麗な講堂(Aula)。

実際に学校の中を隅々まで見て廻ることができ、また先生や生徒たちの顔を見て雰囲気を伺い知ることができるので、進学先の学校選びにはとても役立つイベントです。

私たちも「日本語が履修科目にあること」「理数系であること」などを目安にして幾つかの学校開放日を訪問し、先生・生徒たちの様子や学校の設備、雰囲気などを見て回りました。その結果、最後に”あまり期待せず”に行ってみた超近所のGymnasiumが・・・ものすごく雰囲気が気に入ってしまったわけです。特に講堂がね~、美しかった(笑

ももももちろん、講堂だけが決め手じゃありませんよ!日本語も履修できないし。しかし肌身に一発で「あ、ここ合いそう」と母娘ともに感じ、色々悩んだ結果その学校を第一志望とすることにしたのでした。

待つこと約3ヶ月・・・

1週間の冬休みの後、ギムナジウムの集中申込み期間が2週間設けられます。その間に書類を用意し、各学校へ直接申し込みに行くわけですが、そこから合否の通知が各家庭に届くまでが長い!

2015年度の場合、申込期間が2015.02.11~2015.02.25で、結果通知が2015.05.22となっていました。

ムスメの志望校は定員オーバーで、やっぱり入学試験を受けなくてはいけなかったのですが、テストが実施されたのは3月初旬。そこから合否がわかるまでの長いこと長いこと・・・この生殺しな状態の3ヶ月弱はなかなか嫌なものでした。

晴れて合格、のあと

5月22に一斉に通知が発送されて、23日には殆どの家庭に届いたようです。我が家も例に漏れず。ドキドキして封筒を開けると・・・合格の文字が。

しかし進学先が決まったら、なんだか「小学校にいきたくない~」とゴネるようになることしばしば。なんかやっぱりモチベーションが明らかに欠落した感じで、思春期真っ盛りなせいもあって「男の子が~」とか「友達が~」とかで毎日お悩みのよう。怒ったりなだめ透かしたり励ましたりであの手この手総動員です、今。

先日、入学前の保護者会があって(合格通知と共に日程のお知らせがあった)そこで色々と書類を貰ってきました。ロッカーを有料で年間契約する必要があったりしてまた新しい世界飛び込むことになるんだなーとしみじみ。だけど入学式の日取りがまだ決まっておらず、さてどうなるのかしら。相変わらずユルいよね、ベルリン。


 

【後日談】入学式などなかった・・・

2015-09-02 13-40-33

登校初日の朝。がらーん・・・

さて先日、晴れて中学生(7年生)となった娘ですが、なんと!

入学式がありませんでしたっ・・・!!!

日本で入学式といえば、小学生だろうと中学生だろうと、社会人になっても盛大に『式』を執り行うもの!

しかし恐るべしドイツ・・・ギムナジウムに入学式がないとは・・・!

実は正確に言うと『式』は一応ありました。しかしそれは、新7年生を講堂に集めての「学年集会」的なものであり、日本のように保護者は同伴せず、間違っても紅白の垂れ幕は下がっていないのです。

もしかしたら学校によっては違うのかもしれませんが、 それでも「入学式のない学校がある」というのは驚きました。

ドイツへきて8年、また新しい文化の違いを知ったのでした・・・。

おススメの本

ドイツに来て右も左もドイツ語も全くわからない時に大変お世話になりました。地域差による情報誤差はありますが、ベルリンでも大いに役立ちます。

制作者近影

制作者 : 樋口 美徳(ひぐち みのり)
Webデザイナー・グラフィックデザイナー・イラストレーター
美大卒業後インターネット黎明期に独学でWebサイト制作を学び、1999年より日本の会社でデザイナーとして2008年まで勤務。勤務中2007年にドイツ・ベルリンへ移住し、以後フリーランスとして働いています。
夫と長女(大学生)、長男(高専生)の日本人4人家族でドイツ生活絶賛サバイバル中です。

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